沼南(しょうなん)ラジオ工作室 工作作品内容 2019年 ”10月26日”
 50BM8 ヒータ直流点火でACノイズを完全にカット 


=== 管球式アンプの雰囲気と魅力に少しだけ迫る 「50BM8ステレオアンプ」====

          


←管球式アンプの雰囲気を小さくまとめた

 デジタルーディオ機器やCDプレーヤなど、イヤホンで聴いていたサウンドを部屋のスピーカで楽しむことができる真空管2本だけで完成する出力2〜3Wのステレオアンプです。

 製作したのは2012年。最初は別の重低音専用ICアンプと併用していましたが、現在は単独でCDプレーヤにつないで鳴らしています。

「暖かい音がする」、「形が美しい」、「ヒータの明かりが懐かしい」などと愛好される真空管アンプですが、高級な雰囲気を漂わせる本格的なものは、部品の価格も桁違いで全く手など出せません。ここでは手軽で安価な部品を使用しながらも、真空管アンプらしい雰囲気を意識したデザインにしてみました。

 ■真空管は50BM8
 使用する50BM8は一つのバルブに三極管と五極管を封入したオーディオアンプに最適な「複合管」です。仕様は管球式テレビやアンプ全盛期に良く使われた6BM8と同一ですが、ヒータ部のみ異なり、6BM8の6.3V0.78Aに対し、50V 0.1Aです。2本のヒータを直列にすればAC100Vで点火できますが、ここでは整流回路を透して直流点火しています。そのため「ブーン」とか「ジーーー」というノイズは全くありません。
 



=== 2012年 50BM8 ステレオアンプ−2 「シャーシ裏面配線の様子」====

シャーシの両側面の化粧板には、見た目と薄いアルミシャーシの補強の意味も込めました 
 
        



▲(2)電源トランスはシャーシ後部に取付けて、コンパクトなシャーシに納めました。

 シャーシ寸法は幅15×奥行き20センチと小柄ながら深さは後部に電源トランスを取付けるために8センチと少し大き目です。板厚は1ミリと薄く、しなりが心配ですが、左右にネジ止めした木製側板ががっちり補強しています。この側板は、コンパクトなアンプの外観のアクセントにもなっています。

 配線は製作後の配線チェックがやりやすいように、ラグ板を多用して部品同士がなるべく重なり合わないようにしています。
 



=== 2012年 50BM8ステレオアンプ−3 「回路図」====

        


▲(3)ごく標準的なステレオアンプですが・・・・。

 ヒータは通常2本直列にしてそのままAC100Vで点火しますが、似た回路の別のアンプでノイズに悩まされた時、ヒータを直流点火にしたところ、それがスッキリと消えた経験をしました。以来、その手をよく使っています。ここでもそれに習いました。先に触れた如く、ACによるノイズ、ハムは皆無です。
 トーンコントロールは、高音を少しカットする位のものですが、ホーン型ツイータを使った2ウェイスピーカには高音を調整するのに効果的に働いています。

 



=== 50BM8 ステレオアンプ 製作 4 ====

 製作後の改造、その推移 
     
    



←(4)イージーリスニング用に 出力トランスを換装

このアンプ、「電子工作マガジン」誌の製作記事用に、安価で作りやすく、しかも一定の真空管アンプらしい音を追求することを目標にしました。

 しかし、真空管アンプのコストを決定するのは、ほとんど「真空管」と「トランス」。ここでは見た目(外観)で真空管アンプの雰囲気を感ることにしました。6BM8より少し安価な50BM8にしましたが、ヒータ直流点火による最低限のハム、ノイズ対策は完璧です。

出力トランスは、高1ラジオキット「Retradi−1」に使用した小型ラジオ用(それでも1個820円)。音質の点はともかく80Hz〜20kHzフラットなF特測定を示しました。

 後に、出力トランスは春日無線変成器の「OUT−54B−57」に換装しました。

電源トランスは230V 60mA、春日無線変成器のkmB60F。このアンプの電源としては、やや電流容量不足ながら、コストの点で妥協しました。しかしヒーター用端子を使わないのでその分だけトランスの負担は軽くなっています。
出力トランス部分は当初からケースを作ってカバーしています。



=== 50BM8 ステレオアンプ 製作 5====

電源トランスはシャーシ後部に            


▲(5)電源トランスは後ろからでなければ見えない 

 電源トランスはこのような位置に取付けることになりました。これにより大幅なシャーシの小型化が実現しています。シャーシの重量配分が後部になった結果、シャーシ正面の電源スイッチはスナップ型だと、オン時にシャーシ前が持ち上がってしまうので、プッシュ型にしてあります。

 出力トランスは、換装後ですが、カバーは最初からのものです。



=== 50BM8 ステレオアンプ製作 6 ====

  体裁とシャーシ補強の意味を込めた側板 
     
       



←(5) 側板の製作

■側板加工  前面を斜めカットした側板はこのアンプの体裁に変化をあたえています。素材の板厚は18ミリですが20ミリ以上あったほうが重厚感がより高まるでしょう。
 45度に斜めにカットする部分が前面になりますので細心の注意をして曲がらないように切ります。あらかじめカット部分に鉛筆で印をつけ、万力で固定して斜めの角度でノコギリ引きしました。

 斜めの切断面は、鉄製の木工用ヤスリで平面をさらに平らにしたあと、一度サンドペーパーで滑らかにします。左右の板の形が整ったら、アルミシャーシの両側面にあてがってみて寸法がぴったりあっていることを確認しておきます。

シャーシ取り付け用の穴を二つずつあけます。ネジの頭を側板に沈ませるために、はじめ6.5ミリのドリルで穴をあけ、さらに外側から直径10ミリ、深さ5ミリ程度のザグリを入れます。専用ドリル刃が必要ですが、半丸の彫刻刀でも加工可能です。 側板はもう一度サンドペーパーをかけてなめらかにし、水性アクリルニスでつや出しをします。ここで使った、ひのきの板の場合、きれいな木目が浮き出てきました。



=== 50BM8 ステレオアンプの製作 7 ====

シャーシ裏面の実体配線図 
      
     


▲(7)ラグ端子で配線をすっきり。1L3 P2個、1L4P5個、1L5P1個の計8個を使用

 配線に使う線はビニール被覆線、スズメッキ線(太さ1ミリ)、エンパイヤチューブ、シールド線、プラグ付きのACコードです。
 ハンダ付けは配線漏れが出ないように回路図の流れに沿ってすすめますが、ここでは電源部分から開始し、次にアンプ部、最後に入力部というようにシャーシ内で電源トランス側から前方向に進めていきます。
 部品配線には各所に取り付けたラグ端子を有効に使います。シリコン整流子の4本の足はラグ端子や電源トランスの230V端子に直接ハンダつけしやすいような形にあらかじめ曲げて、エンパイヤチューブをかぶせておきます。
 抵抗、コンデンサのリード線には、他の線とショートすることを避けるためエンパイヤチューブをかぶせます。
 発熱しやすい部品は2本のセメント抵抗です。これにビニール被覆線やその他の部品が接触しないように配置します。中心部のラグ端子間にアース母線として太さ1ミリのスズメッキ線をハンダ付けします。これをシャーシに接続し、アース部分はここにハンダ付けしています。



=== 50BM8ステレオアンプの製作 8 ====

シャーシ上、OPT配線部分実体図 
   
     


▲(8)シャーシ上出力トランスの配線

シャーシ上の実体図。左右CHの出力トランス一次、二次端子の様子と、その線がシャーシ内部のどこに接続されるかを示しています。













=== 50BM8ステレオアンプの製作 9 ====

2ウエイスピーカにつないで使用中 
     
      


▲(9)こんな状態で通常使用している

 シャーシ上のスペース省略の目的から後部に取り付けた電源トランス、ヒータ端子はAC100Vを整流して直流点火しているので使用せず、その分だけは負荷が少ないですが、もともと50BM8×2のステレオアンプとしては230V 60mAという容量は小さく、しばらく鳴らしているとアツアツになっていました。

そこでその電源トランスから10センチぐらい離れた斜め後部に空冷ファンを設置しました。7メガ用AM/CW用自作真空管式送信機にも使っているのと同じ、かつて流行したパソコン用「光りモノ」パーツの一つです。これで、夏、室温が高い時でも全く熱くなりません。ついでに通常なら触るとやけどしそうになる真空管(50BM8)もその上半分はナマヌルイ程度です。

この手のアンプには、熱い真空管に触れてやけどしないように(モノが当たって破壊しないようにという意味もあるかもしれないが)パンチングメタルのカバーを付けたりすることがありますが、ここではその必要はありません。


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