JA1GMO_沼南(しょうなん)ラジオ工作室 
 2023年 CQ ham radio 11月号掲載
===電波を身近に感じる  
キット風に仕立てた・・スピーカの鳴る簡単ラジオ===
         



日誌ページ23年7月30日からの、つづき↓
大きな音で聞ける簡単なAMラジオ 1TR+2Diode+1IC 高周波増幅+倍電圧検波+ICアンプ

    難易度/★★★☆☆(中の上)
研究ポイント=
(1)基本的なラジオの仕組み確認
(2)高周波回路、低周波回路
(3)電子工作配線


ラジオ製作は高周波、低周波の基本的な回路を知り、入門工作体験には格好のテーマです。「高周波増幅」→「検波」→「低周波増幅」という最も簡単な構成のAMラジオをキット風につくってみました(1セットだけですが。)


キットの構成パーツ
       




□↑ 木製キャビネットに収まります □





パネル背後をみると・・・        




□↑ バーアンテナ・コイル、ポリバリコン、楕円スピーカが  □


 平ラグ板の端子の上にトランジスタや抵抗、コンデンサ、ICなどの部品を立体的にハンダ付けした回路と外部のコイル、バリコン、ボリウムなどの間を配線しています。



【1】回路構成
       




□↑ 図1=このラジオの各部の働き □


 図1がこのラジオの回路構成です。簡単な構成ですが、外部アンテナ無しで大きな音でスピーカを鳴らすことができます。

以下、アンテナからスピーカにまでの各回路の働きを説明します。




【1−@】空間を飛来してきたラジオ放送の電波をつかまえる        



←バーアンテナコイルとバリコンで
電波をキャッチ


【1−@】

@アンテナと同調回路
*(@-1)アンテナ=パネル面の端子に金属線をつなぎ空間を飛来する電波を捉えます。
このラジオにはパネル面に外部アンテナ接続端子が付いていますが、フェライトコアに巻いたコイル自体がアンテナとしても働くので外部アンテナ無しでも聞くことはできます。

*(@-2)同調(共振)回路=コイルと可変コンデンサ(バリコン)の組み合わせです。バリコンの回転で変化する共振周波数が、アンテナで捉えた、中波ラジオ放送電波の周波数(535キロ・ヘルツ〜1605キロ・ヘルツ)のどれかと一致(共振)すると、同調回路内にその周波数の高周波信号電流が発生します。




【1−A、B】捉えた電波を増幅して(強めて)検波(電波から音声を取り出す)        



←高周波増幅と検波


【1−A、B】

A高周波増幅= 同調回路に発生した高周波信号電流の変化をトランジスタ(2SC1815)のベース(B)電極に加えると、コレクタ(C)電極からエミッタ(E)電極に流れる電流変化が約300倍に拡大(増幅)され、感度と選択度を向上する働きをします。

B検波回路= 増幅された高周波信号をゲルマニウム・ダイオード(1N60)を2本使った倍電圧検波回路に通すことで、高周波電流信号から耳に聞こえる低周波(音声)信号が取り出されます。




【★】ここまで図1の働き@、A、Bの説明です。        




□↓ このあとが、C、Dの説明です(大きな音でスピーカを鳴らず) □





【1−C】低周波波増幅=電波から取り出した音の信号を拡大してスピーカを鳴らす        



←低周波増幅




C低周波増幅= 検波回路で高周波信号から取り出された低周波(音声)信号はまだイヤホンを鳴らす程度の強さなので、スピーカを鳴らすためにオーディオ用IC(LM386)で拡大します。  LM386は小形ラジオなどのアンプ用に作られたICです。 

この組立ラジオでも大きな音でスピーカを鳴らします。






【1−D】音声出力(スピーカとケース)        



←スピーカはケース(ボックス)入れる


【1−D】

D音声出力(スピーカとケース)= スピーカは永久磁石の磁界の中でコーン紙に付いたコイルに音声信号電流が流れることで音声信号の変化に応じてコーン紙が振動し、生じた空気の振動が音波となります。

スピーカが剥き出しのままだと前部と後部に出る音波が混ざり、音が弱くなったり変わってしまうことがあるので、普通はケースに納めます。

このラジオでは木製キャビネットがその働きをします。






【2】回路図を見る
       



□↑図2 製作するラジオの回路図 □


2図にこのラジオの回路を部品記号で示します。図中にトランジスタ、ゲルマニウム・ダイオード、オーディオICの外観も示します。




【3】ラジオの組立と配線
       



←シャーシは木板。アルミパネルに、バリコン、ボリウムを取付ける 



★ボリウム、バリコンはアルミパネルに取付け。

★バーアンテナコイルは折り曲げた2枚のアクリル板に固定

★「コイルの線」と「バリコン」の間は4Pラグ端子に配線。

★シャーシ右側の4Pラグ端子には電池、スピーカからの線を配線。

主要回路部分は10ピン×2列の平ラグ板上で配線。それを終えたら木板シャーシ上のネジスペーサにネジ止めします。  その後、平ラグ板の所定のピンと外部(コイル・バリコン、電池、スピーカなど)との間を配線して、仕上げます。

★以下、順を追った実際の組立作業の説明です。↓




【3-1】★平ラグ板の配線から開始
       



← ICのピンを曲げて木片の上に貼る 



ICのLM386は8ピンのDIP型ですが、平ラグ板上でピンに空中配線するために写真のようにピンをペンチで広げてから、厚さ2mmぐらいのバルサ板片を両面テープで貼り付け、ラグ板上に両面テープで固定します。


ピンのハンダ付けは細かいので注意します。




【3−2】▼平ラグ板上に以下の順に配線していきます
       



↑ICを平ラグ板に貼り付け、配線開始 



まず、「スズメッキ線」と「ビニール線」で所定の端子間をハンダ配線

ICはあらかじめピンを広げ底面に木片を貼ります。それを平ラグ付板に両面テープなどで固定。
(IC周りの配線はあとから行います)




【3−3】▼高周波増幅とゲルマニウム・ダイオード(検波回路)の配線=その1
       



↑部品の配線開始 



トランジスタ、ゲルマニウム・ダイオードは熱に弱いのでハンダごての熱を加えすぎないように注意して取付けます。




【3−4】▼高周波増幅とゲルマニウム・ダイオード(検波回路)の配線=その2
       



検波部の残り、抵抗、コンデンサの配線 



510kΩ抵抗、150pFコンデンサ、および1μFの電解コンデンサの配線

電解コンデンサはプラス、マイナスの極性があるので実物で確認し、図の通りの向きに配線




【3−5】▼低周波(音声)増幅部、IC周りの配線
       
▼最後に手前側のピン部分(電源とアースライン)の抵抗、コンデンサを配線



IC周りの抵抗、コンデンサの配線 



ICのピンの配線はスズメッキ線で。
細かいので注意

電解コンデンサはプラス、マイナスの極性があるので実物で確認し、図の通りの向きに配線




【3−6】▼平ラグ端子手前のピン周りを配線
       



最後に手前側のピン部分(電源とアースライン)の抵抗、コンデンサを配線  


平ラグ板上の配線は以上で終わり。


  ★配線を終えた平ラグ板をシャーシ上の2本のネジスペーサにネジ止め。
★その後、その平ラグ板とシャーシ上の外部部品(ラグ端子、スイッチ、アンテナ端子)との間の配線をして仕上げます。

電解コンデンサはプラス、マイナスの極性があるので実物で確認し、図の通りの向きに配線




【4】▼配線を終えた平ラグ板の回路と外部部品との配線
       



▲全体の実体配線図  





【4−1】▼配線を終え、パネル面の目盛り板とつまみを取付け
       


 





【5】▼動作を確認
       



(1)動作テストに入る前に今一度、配線を確認します。

(2)パネル面のバリコン、ボリウムの軸に丸い目盛り用紙を通し、パネルに両面テープやスティックのりなどで張り付け、大、小ツマミをマイナスドライバでネジどめ。

(3)池ホルダに単三電池4本を入れ、電源スイッチをオン、動作を確認します。
音量調整ボリウムは50%位に固定し、選局バリコンを左に回しきった位置から少しづつ右に回転して受信周波数を上げていき放送が聞こえるかを調べます。

(4)配線に問題が無ければ、まず594キロへルツのNHK第一放送が聞こえてくるはずです。

(5)ダイヤルを上に回しながら他のラジオの受信を確かめる

ボリウムで音量を調整しながら静かに選局バリコンを左右に回転して調整。
バーアンテナコイルに指向性があるので、ラジオ全体を水平回転させ音が大きくなる位置をさぐります。


パネル面のアンテナ端子に30センチ〜1メートルぐらいのビニール比伏線をつなぐと感動が上がり、音量も増加しますが、強くなりすぎて音が歪む場合はボリウムをしぼって調整します。

  正常な動作状態で、ここ関東地方の都心から30キロほど離れた地域で、外部アンテナなしでNHK第一、第二、TBS、文化放送までは大きな音で受信できます。1242kHzのニッポン放送(送信所・木更津市)は受信音が弱く、パネル面の外部アンテナ端子に40〜50センチぐらいのビニール被覆線をつなぐ必要があるかもしれません。
 また、バー・アンテナには指向性があるので、キャビネットを左右に回転させると感度が上がる場合があります。
 




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