沼南(しょうなん)ラジオ工作室 「電鍵」工作日誌 2017年2月

===(No.17)ワインボトルホルダ上に製作した自作「全自動バグキー1号」 ===
           




□(17−1)機械式に長点、短点連続を出します □


2016年11月、地域の電信仲間との飲み会に2キー縦押し式自動電鍵「キツツキー」(No.15で掲載)を持参、自慢しながら披露した席で、「いろいろな電鍵を作ってますが、”全自動”はできますかねーー??」と問われて、つい、「バグキーの短点の振動より長い振幅で振らせればできますよ」、と吹いてしまい、機械式全自動バグキーに取り込むことになりました。

翌日からあり合わせ部材で、あのとき瞬間的に口にした言葉どおり、振動バネを長くしてゆっくり揺らせて 各種試作を開始。試行錯誤の結果、なんとか機械的に連続長点、短点が出せるようになったのがこの「GMO流全自動バグキー」です。早い符号は出せませんが、ゆっくり交信する分には実用になっています。



2レバー、リードスイッチ式で製作開始
       




□(17−2)ワインボトルホルダーの板上で軸部分の組立開始 □


仮の板切れ上で長いバネを振動させながら長点を出す試みを続け、機械式接点のベロ状の金属を柔らかく長めにすることで「ツー」は出せましたが、低周波発振器の音はジャリついて、聞くに堪えない音でした。
 そこで、長いバネと磁石+リードスイッチの組み合わせで製作することにしました。短点と長点の二つの振動バネ用の二つの回転軸は、いままでのバグキーでも使ってきた分解したボリウムの軸です。





長い「ツー・ツー・ツー」を出すためにリードスイッチの特性を探る
       



□↑(17−3)グラフ用紙にリードスイッチを貼り付けて、感度範囲を探る □


ここでリードスイッチを使う利点は、ジャリジャリノイズが出ないことの他に、長点の「ツー」を長くしやすいということです。機械式接点では薄いりんせい銅の帯とネジを接点にして接触時間を長めにしたのですが、どうしても摩擦によるノイズが出てしまう。それに引き替え、リードスイッチは、その感度範囲が一番広い領域で磁石を振るようにすれば、感度範囲に磁石が存在する間はツーが持続する。
 その為に電子ブザーにつないだリードスイッチをグラフ用紙に貼り、周りから磁石を近づけて感度範囲が眼で見えるようにします。
方位磁石は、リードスイッチが設置角度によって地磁気の影響を受けているかどうかの確認のために置きました。リードスイッチの方角を変えて測定しました結果、わずか感度範囲のふくらみが違ってくるような図になりましたが、明確な地磁気の影響は明らかになりませんでした。  




リードスイッチの感度範囲が見えてきた
       



□(17−4)グラフ用紙の上実測したリードスイッチの感度範囲 □


 リードスイッチの周囲で割り箸の先に付けた磁石を移動させながら、導通ポイントをプロットしていくと、次第に感度範囲が見えてきました。立体にすると落花生の殻のような形になります。
 この一番ふくらんだ領域で磁石が振動するような位置関係を作れば、長い「ツー」がだせます。これに基づいて、最適なバネ上の磁石の位置、土台上のリードスイッチの位置を探っていくことになります。



短点、長点それぞれ磁石とリードスイッチの最適な位置を探る
       



□↑ (17−5)磁石はマグネットクリップから取ったもの □


 長点、短点用リードスイッチをワニグチクリップコードで電子ブザーに繋ぎ、「トン」と「ツー」の長さの比率がおよそ「1対3」になるように、おもりの位置や振動バネの長さ、そしてリードスイッチと磁石の間隔を変化させていきます。おもりの位置によって、それぞれの速度が変わりますが、バネの振動数と振動の力も影響してくるので、そのバランスを取るのがむずかしい。
 バネは単にレバーの手許のノブを横に動かすだけでは、うまく振動しません。レバーを押した直後にストッパで、「カクン!」と止める仕組みにしなければプルプル震えません。
 こうした各要素を満たすための構造が各種アルミ部材です。




長点用振動バネ部分のクローズアップ
       



□↑(17−6)初期段階の頂点振動バネの様子。左側のアルミ板はバネの振動調整用です □


 試行錯誤途中の長点用振動バネの様子です。バネにぶら下がっている形の先端(右側)のおもりは左右にスライドすることで振動速度(周期)が変わります。磁石とリードスイッチの位置関係が長いツーを得るためのキモになります。
 左側のアルミ板の角度を変えることで、振動バネの実際に振動する長さを調整しています。この角度で符号速度と、長点そのものの長さが変わってきます。 調整は微妙です。



初期段階の設定はこのように
       



□↑(17−7)初期段階で決定した、振動バネ、接点、リードスイッチ、おもりの位置関係 □


あれこれ試行錯誤の結果、初期段階の設定はこのようになりました。まだ仮接続の状態です。
長点、短点用バネ上のおもりに接している大きめなネジは、振動吸収のため、金具に緩めに取り付けてあります。操作中、接点となる磁石が暴れないようにするためのものです。
 これで一応符号が出せるようになりましたが、まだ大きなMDF板の上にでの仮接続なので、さらに最終調整を行います。



MDF板を外して最終調整と体裁のしあげ        



□↑(17−8)振動、接点部分の最終形。長点用磁石とリードスイッチの最終調整。長点用磁石は強力ネオジウムに変更□


磁石とリードスイッチ、短点用は問題なく動作していますが、長点用は正常動作が微妙。そこで 磁石を強力な「ネオジウム」というものに変更、リードスイッチの位置も振動バネの先端に持っていきました。リードスイッチは縦型に設置。これで動作が安定しました。振動部分を保護するためにアクリル板でフェンスを作ります。



取り組みから10日、GMO流 全自動バグキー完成! 
       





□(17−9)同じワインボトルホルダー上のバグ(半自動)と並べたGMO流全自動バグ □


あの11月の飲み会の席でつい、「そんなの簡単」的に言ってしまった全自動バグキーですが、けっこうむずかしかった。もちろん、これで完全というわけではなく、操作にはおおきなストロークと有る程度意識した力強い打鍵が必要になる、しかも速度はゆったりめ。。。というわけで、高速を目的にバグキーを使う人には適さない。ただただ、機械的に符号が出せるというおもしろさが分かる人には使ってもらえそうなキーになりました。
左が製作した全自動、右が以前製作した半自動(バグキー)で同じような体裁で共に危なっかしいGMO流手作り電鍵です。
 実際の交信では安定して符号がだせるので、ゆっくりした和文交信には適していると感じています。このあと、さらにかまぼこ板上の全自動バグに取り組みます。 記:2017年2月 JA1GMO

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